東京高等裁判所 昭和32年(う)1378号 判決
被告人 植松永祐 外一名
〔抄 録〕
検察官の控訴趣意について。
記録を調査すると、被告人植松永祐に対する本件公訴事実は窃盗竝びに選択刑として罰金刑が定められている道路交通取締法第二八条第一号の罪の事実であるから、裁判所法第三三条第一項第二号により簡易裁判所が第一審として管轄権を有すること明らかであるが、簡易裁判所は同条第二項によれば同項但書以外の事件については禁錮以上の刑を科することはできないものであり、若し同裁判所がその制限を超える刑を科するを相当と認める場合は、同条第三項刑事訴訟法第三三二条により事件を地方裁判所に移送しなければならないのである。そして原判決の認定した同被告人の罪となるべき事実及び法令の適用はいずれも論旨摘録のとおりであり、これによると、原判決は同被告人の道路交通取締法違反の罪について、その罪が同被告人の窃盗の罪と刑法第五四条第一項前段又は後段の関係にあるものと認定しないで、同法第四五条前段の併合罪の関係にあるものと認定しながら、この道路交通取締法違反の罪について罰金刑を選択しないで懲役刑を選択しているものであつて、原裁判所としてはこのように道路交通取締法違反の罪について懲役刑を選択するを相当とするならば、当然裁判所法第三三条第三項、刑事訴訟法第三三二条により同被告人に対する本件を地方裁判所に移送しなければならないものである。しかるに原裁判所は地方裁判所に移送することなく、道路交通取締法違反の罪について懲役刑を選択しこれと窃盗の罪とが併合罪の関係にあるものとして懲役刑を言渡しているのは刑事訴訟法第三三二条裁判所法第三三条第三項に違背したものであり、この訴訟手続についての法令違背は判決に影響を及ぼすこと明らかであるといわねばならない。しからば原判決の訴訟手続法令違背を主張する論旨は理由がある。
(加納 吉田作 山岸)